ゲーテの有名な言葉をふと思い出した。 名誉を失っても、もともとなかったと思えば生きていける。財産をなくしたら、またつくればよい。しかし勇気を失ったら、生きている値打ちがない。 この意味することは、何だろうか? 考えてみた。
きっかけは、ネット記事
「大きな声ではっきり意見する子」が信用ならないワケ、学校教育で最も大事なこと
・自分のヴォイスは大きく、はっきり語れない。
・親から聞いたか、教師から聞いたか、物知りの友人から聞いたか、YouTubeで自信ありげなコメンテーターから聞いたか、「誰かが断定的に言ったこと」なら、大きな声で、はっきりと再生することができる。
・この記事の参照元は、内田樹氏の「勇気論」。内田氏は「今の日本人に足りないものは何ですか?」と訊かれて、「勇気じゃないかな」と答えたとのこと。気になって図書館から借りて読んでみた。
P55 自分に道理がないときは、退く。道理がないにもかかわらず、力押しで勝つというのは、「邦に道なきとき」に「富み且つ尊き」身分であるのと同じ。 恥
論語、泰伯篇にある言葉「天下に道あれば則ちあらわれ、道なければ則ち隠る。邦に道あるに、貧しくして且つ賤しきは、恥じなり。邦道なきに、富み且つ尊きは、恥なり。」
P70 「だまされた」のだという言い方で戦争責任を忌避しようとする人たちに伊丹は手厳しく筆誅を加えた。だまされることもひとつの悪。
P89 仲裁者は身銭を切る覚悟がいる。
P103 大瀧詠一 「そんなことをする人間はどこにもいない」と周りにがたがた言われてもぜんぜん気にすることはない」
P108 情報は詳しい人にきけばいい。どういうふうに問いをたてたらいい?問いの立て方を知りたいという人が、自分に来る。問題を立てることは価値のあること。
P134 意地悪な社会になった。あなたが聞きたいことは、こういうことでしょう?と教えてあげてもいいのに、記者に屈辱感を与える政治家。
p141 コミュニケーションの本質は、人間が向き合って共存している事実を確認しあうこと。
P146 ウエーバーの書き方。資本主義の精神、という本、例示を大事にしている。
P168 勇気と正直と親切は 1つの資質の3つの異なる現れ方
P172 噓つきの話 滑らかだけど平板 メタメッセージを発しない。
自分の語りつつあることについて、その読解の仕方を指示するメッセージを決して発しない。 正直には知性的、感情的成熟が必要。 自分の語っていることに注釈を入れられる人が正直な人。
P188 親切 仮にどれほど狭い知見であろうと、自分自身が自己の経験を通して自得した知見、確信を以て言える思念や感情を語ることを「親切」という。白川静氏が述べたこと。
P195 考えないうちに動く身体 惻隠の心 武道の修行の目標でもある。
P225 有閑階級:非生産者を擁している集団のほうが、そうでない集団よりも生き延びる力は強い。人間は金のために生きているという幻想をふりまき、集団成員たちに「働くインセンティブ」を提供するという労働。古代において、呪術師やストーリーテラーたちが担っていた物語をつくる仕事を現代ではブルシットジョブが担っている。コンサルなどもそう。
物語をもっている集団は (集団をバインドする強い物語) 持たない集団より強い。
P245 ハンカチ落とし、かくれんぼ 子どもの感受性を高める。
P247 SNS 太古の昔同様 こちらにいくと悪いことが起こりそう、と思ったらやめる。
P269 勇気とは「ごめんなさい」が言えること。
※ エリックホッファー自伝で、運転手がゲーテの言葉にある「勇気」を「希望」と間違って話していたことをきっかけに、その違いを論ずる一節があり、そこで上記のゲーテの言葉を知ったのだけれど。人の受け売りでなく、自分で思考錯誤して得たことから確信できることが「勇気」につながるということだろうか。ChatGPTで物事が効率的に解決できる時代で、ますます人の受け売りに頼りがちな時代にはなったけど、そういう時代だからこそ「勇気」という言葉の意味を考えるのは大事なのかもしれません。
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