2024年8月14日水曜日

「資本主義の次に来る世界」ジェイソン・ヒッケル著を読んでみた

ヨーロッパの資本主義の流れがよく理解できた。

①資本主義のロジックは、人間は「自然」と切り離された存在で精神と心と主体性をもっているが、自然は不活発で機械的な存在である(二元論)。人類学者は、歴史の大半を通じて人間は、アニミズムに依拠してきた。P39 じつは、最近の科学によればアニミズムのほうが、真実に近いのでないか。P275、P278 

 ※鳥の言葉、魚の感情、等研究している人がいる。

②1300年年代初め、ヨーロッパ各地で平民が封建制への反旗を翻すが、うまくいかない。が、1347年黒死病により人口が激減すると、労働力が不足し、小作農と労働者が交渉力を持つようになった。農奴制が廃止。自分の土地で、コモンズ(共有地)を自由に活用できるようになる。~1500年まで「ヨーロッパ労働者階級の黄金時代」

 ※人口減少をマスコミでは、問題視しているけれど。。かといって、移民では解決できないような。

③上流階級による富の蓄積を阻んだので、小作農を土地から追い出した。いわゆる囲い込み(エンクロージャー)によって、多くの農村コミュニティが破壊された。P53

  ※能登地震で、官僚が「過疎地復興はむだ」「移住を考えよ」と言ったとか話題になっている。まさに「囲い込み」。そして、行き場所なく都市に集めて、安価に雇えれば、さらに儲かるし。安い土地を外国資本が活用して儲けることが可能。ということになりそう。

④資本主義が台頭するには、資本の蓄積が必要。アダムスミスは、少数の人が懸命に働いて稼ぎを蓄えたために生じたと主張したが、歴史家は、略奪のプロセスだったとみている。P54  植民地化も同様

⑤農地は一時的にしか借りられなくなった。かつての協力的なシステムは、絶望的な敵対を中心とするシステムへと変わっていった。利益を中心に計画され、資本家の利益を増やすためのものになった。生産性は高まったので、強奪の言い訳になった。

⑥ヒュームの「希少性」理論 欠乏が続くほうが、勤勉になるという考え、資本主義の支持者は、富を生み出すには人々を貧しくする必要があると考えていた。P63 資本主義の特徴であるきわめて高い生産能力は、人為的希少性の創出と維持に依存していた。植民地政府が私富を増やすには、豊富にあるものを希少にしなければならなかった。天然の果樹園を焼き払う、海岸で自由に手に入れられた塩は、これを行う権利を人々に買わせた。

 ※昔は、タダだったものが有料になっている。

⑦技術革新がエネルギーや資源の消費をふやしてしまう。P159

 ※EV、洋上風力、ソーラー等、逆に資源の枯渇や環境を破壊する例も。

⑧成長し続けなければならないという 絶対的な思い込みがある。 P170

⑨成長は進歩をもたらすと限らない。長命な国は、必ずしもGDPによるものでない。GDPは低くても、公衆衛生や公的医療保険等が整っている国は平均寿命が高い。P180

 ※日本は国民皆保険を今後も維持することが重要。

⑩社会がより平等なデンマークの国民は、購入する衣服が少なく、長く使う。広告も少ない。不要なぜいたく品を買うことに人々が興味を示さないため。富裕層が使いきれないほどお金を持ている場合、その余剰分を生態系を破壊する発展作業に投資する。公的サービスに投資することが、エコロジカルなメリットがある。公共財の存在は、所得を増やさなければというプレッシャーから人々を開放する。

 ※古い車の税金を高くするというのも、本来あってはならないこと。

⑪人間の幸福は、収入そのものでなく、その収入で何が買えるか、より良く生きるために必要なものにアクセスできるかどうかが重要。公共サ-ビスやその他のコモンズへのアクセスを拡大すれば、人々の「福利購買力」を向上させっれる。そうなれば、さらなる成長を遂げなくても、すべての人の豊かな生活を実現できる。

 ※なんでも民営化の思想が危険ということ。

⑫より高い賃金と短い労働時間という形で、生産性の向上がもたらした利益を労働者に還元できるはず。それができないのは、仕事が人為的に希少になっているから。労働者は、より勤勉かつ生産的に働かなければならず、さもなければ、より生産的な誰か(通常は、より貧しく、より危機的状況にある人)に仕事を奪われる。P234

 ※移民により、賃金がおさえられる。

⑬資本主義は、豊かな状況では作動しない。P238

  ※戦争が起こると景気がよくなるとは、よく言われる。

⑭植民地化は、人間や自然を「モノ化」するプロセスだった。 P273

ポスト資本主義のためには p209

・計画的陳腐化をやめる。 物を長く使えるように設計  ・広告をへらす

・所有権から使用権へ移行する  

・食品廃棄を終わらせる   ・生態系を破壊する産業を縮小する

P174 重要なのは、成長そのものでなく、わたしたちが何を生産しているか、人々が必要なものやサービスにアクセスできているか、所得がどのように分配されているかということ。ある段階をすぎると、人間の福利を向上させるためにGDPを増やす必要はまったくなくなる。

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